ぼちぼち観察記録

見た舞台の感想やオススメや自分語り。関西小劇場と推しさんとミュージカル。

刀ステ天伝・无伝を戦国オタクが見た感想。

久々の単独感想記事です。そこまで長くないんだけど、上半期まとめの中にあると読みづらそうだったので。

 

ゲームは未プレイですが、ステもミュも友人に借りたり配信でいくつかは見ていて、映画版は信長が推しさんだったため通い、かつ末満健一さん及びTRUMPシリーズ・劇団Patchのファン、おまけにステアラ髑髏城の亡霊なので、それ戦国オタクか…?って感じですが。ステは虚伝と外伝のみ履修。推し戦国武将は長宗我部盛親公です(天伝で名前だけ出てきたよ!)

 

末満さんによるステアラの演出めちゃくちゃ見たかったんですが、時世と遠征の兼ね合いがうまくいかず。あと好きな時代・人物を描いた作品で勝手に解釈違いを起こしがちで最近歴史物の舞台を避けていたのもあり、積極的に「じゃあ配信で見よう!」とも思っていませんでした。が、周りの繭期たちがどんどん无伝(というか真田十勇士)にハマっていき大騒ぎをしていて、「なんか楽しそ~わたしも混ざりた~~い」という動機で見ました。好みの合うフォロワーたちの大騒ぎは何よりのプレゼン。

丁度全国的に演劇が中止になっていた時期なのもあり、配信を見ること自体も増えていたので5/1に天伝を、5/9に无伝を見ました。刀ステ全部見てるフォロワーさんたちにちょこちょこ補足してもらいながら見れたのありがたかったし、何だか意味深なセリフがあっても「まぁ末満さんのいつものやつやな(過去作とのつながりが多い)」でスルーできた。慣れ。

 

全然刀剣男士の話をしてないのでご了承ください。感想の量は天伝8:无伝2くらい。

 

天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣-

ほとんど真田信繁の話。

天伝の配役発表があった時に「修理(大野治長)がいるのに…淀殿がいない…???」と驚いたのを覚えている。浅井のことや生前の秀吉との絡みが描かれていない以上、居たところでただのヒステリックな毒親になりがちなので「まぁいないならそれはそれでいいか…」と思っていたけど、そうなると

『誰が秀頼を城に閉じ込めてしまうか』

が重要になってくる。あくまで個人的にですが、大坂の陣で一番のターニングポイント…というか史実では実現しなかった/創作物で実現してるとテンション上がるのが、『秀頼の出陣』なんですよね…史実でも全く出陣してないわけではないし、出陣を淀殿や周りの家臣が止めまくったって話も(さすがにそんなことないやろ…)って思うけど、そういうIFが歴史もののロマンだから…。出陣してたら絶対勝ってた、とも思わないのが切ないところ。

そういう歴史創作にありがちな『秀頼の出陣を止めまくる淀殿』の役割が、一期一振に割り振られていたのがすごくうまいなぁと唸った。いち兄が止めててもなんの嫌味もない。刀剣男士なので歴史を守るという使命があるのもわかっているから、秀頼と一期一振の会話がすごく穏やかに見れました。父親についての葛藤はあったけど、偉大すぎる父親と、自分と、一期一振と向き合って話したうえで城に留まっていた秀頼は、周りの言いなりになる愚鈍な若君ではなかった。愚鈍なだけの秀頼が苦手なので助かった…。

そんなわけで、秀頼についてはとっても満足。小松くんのすらりとしたスタイルは作中で「太閤殿下の子ではないのかも」と言われることに説得力が増していたけど、淀殿も背の高い人だったと聞くのでお母さん似ということで。個人的に修理と淀の関係が好きで創作における「修理が秀頼の父親説」自体は結構好きなんだけども、この秀頼は太閤殿下の子であってほしいなと思った。そのスタイルとまっすぐな瞳と爽やかな笑顔で、「出陣していれば味方の士気が上がり、豊臣に恩のある諸大名たちがこちらに味方するかもしれない」と思わせる美丈夫。理想の秀頼像でした。

 

で、秀頼が良い分見事に不憫な役割なのが、真田信繁。无伝に信繁出せないから退場させるとしてもそんなやり方があるか!?って驚いたけど、キレはしなかったので末満さんの展開がうまいのか、わたしがただ末満脚本を好きなだけかがわからない。

見た目はTHEオーソドックス武将、毛皮の羽織が大河真田丸真田昌幸のようで真田らしさ(田舎者っぽさ?)もあってすごく好き。「幸村」ではなく「信繁」なのもあり、下手にヒーローっぽくない一般的な戦国武将…に見えるのに、実際蓋を開けてみる
と武将らしいことがあまりできていない。戦国武将って

「戦で名を上げ主君のために華々しく散るのがサイコー!」

ってとこがあるから、信繁が生にしがみついてるのは意外だった。「死ぬまで生きよ」はたしかに真田の家訓だけども、「ここが自分の死に場所だ」と思うならそこで死んでいいと思うのだけど…とか考えながら見てたらどんどん悪い方向に転がっていって「アチャー」って頭抱えた。事前に信繁が黒幕(でもなかったですが)というネタバレは見てたけど、豊臣が頼りないから俺が天下取ったるわ!みたいな方向性だったら嫌だな…って思ってたのでそうでなくてよかったです。

 

秀頼様を薩摩へ逃がすだけなら信繁じゃなくても全然いいのに、『花のようなる~』の逸話があまりに強すぎた。そこを利用され弥助たちにより伝えられてしまい、信繁は戦で死ねなくなった。部下の失い方も本来の武将のそれではない。「秀頼、ひいては豊臣を守りたい」って気持ちと、「父のような惨めな死に方したくない、父の無念を晴らしたい」あたりがごちゃまぜになっちゃって、更に「死ぬまで生きよ」が呪いとなってしまい死ねない信繁…この話の一番の被害者…。

 

父昌幸のように老いさらばえて「床の上で死にたくない」(※これは家康も秀吉に対して言ってるから、やっぱ武将として一番嫌なんだろな)から、「戦で華々しく死にたい」と思っている信繁が大坂へ入り、主君(豊臣)のために戦って死ぬことは信繁の中でも筋が通っているのだが、秀頼様を薩摩へ落ちさせなければならないため「死ぬまで生きる」=「戦で主君のために死ぬ」ではなくなり「何が何でも生き残る」「歴史を変える」ことが主体になってしまい、信念がぐらぐらする。

最終的に部下をああいう形で失い(おっさんズリリウムってファンの間で言われてて爆笑しましたが)、「歴史を変える」ことに躍起になりすぎてああいう幕引き選んでる信繁本当に…可哀想…自害はいいけどタイミングがおかしいよ…歴史に一太刀浴びせる(うろ覚え)じゃないんだよ、それは夏の陣でプラスの方向でやって…秀頼ガチで引っ張り出すとか家康倒すとかよ!そう、真田信繁(幸村)の逸話といえば、十勇士や薩摩落ちももちろん有名だけど『夏の陣で家康本陣に突撃し、家康の首を取る(ので以降の家康は影武者)』が一番かっこいいじゃないですか!(※主観)それをやらせてあげなよ如水このやろ~~!!(ジョ伝見てないのでトンチンカンなこと言ってたらすみません)

戦で死ねない武士、可哀想だな…というのを、不死を扱っているTRUMPシリーズを作っている末満さんの作品で考えるのが面白い。

 

信繁が最期もうぐちゃぐちゃになってるのを見て、何事も一人で抱えちゃだめだよねということも思った。これ戦国武将に抱く感情?
相談(情報共有)相手が修理なのは駄目だな…立場が違いすぎる…。五人衆全員とは言わずとも、あの信繁の近くに又兵衛がいてほしかったなぁ。勿論居たら話が破綻するけども、又兵衛ないし牢人がもう一人いたら信繁をぶん殴って目を醒まさせてくれそうなものを。

あっそうそう、大野治長と信繁の関係が穏やかだったのがとても新鮮だった。だいたい仲悪いので。又兵衛いないから余計かな…(何でも又兵衛出してくる)見終わった時に、治長も弥助たちから薩摩落ちの話を聞いていて信繁に協力してるんだと思ってたんですけど、そんなことはなかった…信繁を絶対的に信頼してるっぽいのはなんでだ…(多分わたしが色々見落としています)
治長、秀頼を「秀吉の子であることを証明するために天下人にする」って頑張るのはいいんだけど、全然「秀頼自身」のことを見てないのでコラコラって思ってた。天伝无伝における淀殿像は特にわからなかったけど、治長的に完全否定もできない何かがあったんだろうか…。ちょっと我守護枠っぽかったのでハラハラしてたけど、余計なことせず終わって安心しました。いいキャラではあったんだけど、淀殿がいないので自分の視点が宙ぶらりんになる…推しカプの片方がいないような状態なので(雑)


弥助、めちゃめちゃ「末満キャラ」の煮こごりで面白かった。過去刀ステをあまり見られていないので細かいバックボーンは知らないけども。ルキーニか天魔王か?って思ってたらもっと天魔王っぽいのが无伝で出てきた。
あと家康!健康オタクでありつつも戦ジャンキー!好戦的なジジイ好きです。清光との一騎打ちのところ、戦国と幕末のオタクなので大歓喜。歴史のつながりを感じる…!!

 

无伝 夕紅の士 -大坂夏の陣-

无伝の方はもう史実なんぞ知らん!真田信繁死んでるし!!とまぁ気軽に見れるな~と思っていたら色んなところで髑髏城の幻影に襲われた。如水EXがあまりに天魔王で膝叩いて笑っちゃった。ああいう顔見えない謎の鎧ってよくあるんだけどステアラで見るとそれは天魔王なんよ…最後のぐるぐるカテコが逆回転でめっちゃ違和感あった。

 

みんな大好き真田十勇士の皆さん、元から知ってる小劇場おじさん達で構成されているので、見ていて異常な安心感があった。冒頭のシーンで近ちゃんと星璃くんまで揃うので「豪華なPatch本公演なのか?」って錯覚を起こす。

いくらでもスピンオフが作れそうなキャラ立ち集団ですごい…ビジュアルデザインも良すぎる…。刀剣男士の横スクロールバトルがんばれゴエモンか??って思ったり才蔵の赤マントがヴィンセントに見えたり、時々ゲーム脳で見てた。ユフィが混ざってても気付かん(気付くよ)名乗りもずるいかっこいい…末満さんの作るキャラクターが好きなんだなぁと実感する。

ただ、逸話伝承から生まれた十勇士たちが仕えていたのって、それはつまり信繁でなく幸村(概念)なのでは…ってところは気になった。信繁様とは呼んでいたけども。あの世(?)でみんな信繁様に会えるといいね…会えなさそうね…。

分岐して切り離された歴史、もう放置すればいいんじゃないの?って思ってしまったけども、望月があまりにチート発明をし過ぎなのでほっといたら後々やばい勢力になりそうだな…みんな強いしなぁ。国外へ乗り出して行きそう。

 

高台院大坂城内にいるのはめっちゃ思い切った歴史改変で逆に良かったし、話の落とし所も好きだった。尾張弁が可愛い。歌うお姿の安定感よ…カテコで銀橋の幻覚が見えましたね。

ただ話の都合なのはしょうがないんだけど、高台院様を母上ってめちゃくちゃ慕ってるのに淀殿の出番が一瞬しかなくて、且つ説明のために「淀の母君(母上?)」だけで終わる秀頼はなんか嫌だ!!!  改変された歴史なんだしもう淀殿一切出てこない方がよかった!!!(わがまま)と最後の最後でちょっとだけ暴れる歴ヲタになった。

 

秀忠と対面でああやって話す秀頼は初めて見たかもしれない。偉大な父を持つ二世同士の対峙めちゃめちゃ良かったんだけど、末満さん作品にありがち(とはいえわざとそうしてるとも思わない)アンサンブル詐欺ほんとどうにかならんかな!小林さんだけアンサンブルの中で一段階別クレジットにするとか…なんとかならんかったんか…!

 

端からIFとして挑んだので気軽には見れたけど、末満さんの描く推し武将や木村重成が見てみたかったし、真正面から淀殿と秀頼を描いたら感情絡みまくって激重な親子の物語になってそうでそれはそれで見たかった。

天伝も无伝も「舞台刀剣乱舞」としての楽しみ方をしてないんじゃないかとは思うけど、久々に戦国武将について考えることができて楽しかったです。

 

刀ステの構造、絶対好きなんだけど追いつくには量が増えすぎた…綺伝の本公演は配信見れたらいいな…。