ぼちぼち観察記録

見た舞台の感想やオススメや自分語り。関西小劇場と推しさんとミュージカル。

Patch a Building101『オンタマジャクシ』

梅雨のこの時期、雨が上がったあとの生ぬるい空気を感じると、ふとフジハラビルを思い出す。あれは確か二月だったはずなのに。

 

劇団Patchの三好大貴さん主宰のBuilding303『水の泡』が来週から上演ということで、なんとなく一作目の『オンタマジャクシ』の感想を引っ張り出してみる。
わたしはオンタマを見てPatchとよしくんを本格的に推し始め、以後積極的に小劇場作品を見るようになり、二作目『アワーベイビー』に言いたいことがありすぎてこのはてブロを作ってしまったくらいBuildingには踊らされている。感謝はしているし、同時に少し癪でもある。内容がだいたいド地雷なので。(これは完全に個人の好みの話です)

なので、水の泡支援というわけではなくただの懐古です。感想というより自分の話ばかりしている。アンケートとして送った内容を中心に大幅に再編集。

 

Patch a Building101『オンタマジャクシ』

今週末はどちらも雨だと聞いて、残念だなという気持ちと「うわ出かけるのめんどくさい…」という気持ちが半々だった。当時のわたしはあまり乗り気ではなかった。
しかしどんどん気温が上がり二月だとは到底思えない『ぬるい』空気に包まれたのを感じ、「あぁ、この今日の天気とこの作品のことは絶対に忘れない」と確信した。
 
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「死んだ人間が冷たいのなら、生きてる人間は熱いはずだ。」
「じゃあ生きているのに死んでいる人はどうなんだろうね。」
「うわ、ぬる。」
「…ぬるいんだ。」
「うん、ぬるい」

これは、湯気立つ男と18.3度の女と生温い男の本当のお話

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Patchにハマったきっかけは以前こっち↓ 
 
でざっくり語ったけども、オンタマの上演が発表されたのがちょうど2015年末で、「ぱっちを応援しようかな…」って思った時期にドンピシャ。しかも繭期を拗らせている最中でもあったので、SPECTERの石舟が主宰で出るのが萬里とノームってやばくない?って話をしていた記憶がある。尚、近藤頌利君に関しては「ぱっちの…どれだ…?」くらいの印象しか無い頃。ごめん。
 
発表されたのはいいものの、まだ普段の三好君のことをほとんど知らなかったのでどんな内容かさっぱり想像ができず、しかも舞台上と客席の壁が希薄な小劇場。役者と物理的な距離が近いのがとにかく苦手で嫌で、直前までチケット取るかを迷い続けた。友人が一緒に行ってくれてなかったらきっと行っていない。某さんほんとありがとう。
 
会場へ入った瞬間から、流れるBGMと淡い青緑の照明で異空間に迷い込んだような気分になりつつも、そこにあるのはどこにでもあるような家具たち。日常と非日常の狭間をゆらゆら泳ぐような、そんな空間だった。今思うとオーソドックスな小劇場演出って感じだけど、当時のわたしには全てが新鮮。
 
奥からぬるっと入ってきた青年(ハル/演:中山義紘)。いっそ仰々しいほど咳き込む姿に、ゆらゆらふわふわした空間は一気に居心地の悪いものに。(これは完全に余談だけど、前週に赤×坂の「貧乏ネ申」「Equal」を配信で見たところだったので、やたらと咳き込む男を見る一週間だった)
 
よしくんの目線や手先までの身体全てを駆使した細かい演技が大好きで、あんな近さでそれをほぼ一時間じっくり見られたのは嬉しかった。息遣い、震える手、泳ぐ目、ビールを飲む喉、紙や布ズレの音…どれも大きな劇場ではまず見えないもので、小劇場の良さがたくさんわかった。その分威圧感や悲しみも直接ビリビリと伝わってくるようで、後半ハルが暴れるところが本当に怖くて、今すぐここから逃げたい見たくないと怯えながら見ていた。前のめりにはならないようにしてたけど、口をずっと押さえてプルプルしてたと思う。
 
林成憲さんとなりえるみさん(現・中村るみさん)は今回初めて知ったのだけど、お二人とも若くてびっくり。あれだけ子どものように大暴れしていてもどこか「お姉さん」な雰囲気を持つナツミと、厳しいことも言うけれど二人を見守る目が優しいトウマ、そして当時25歳とは思えないほどの少年性をもつよしくんのハルというバランスがとても好きだった。
ヤングチームの三人はどういうバランスだったのだろうと気になったのだけど、行ったのが千穐楽だったのでその答えはわからず。ヤングチーム見た人の細かい感想が読みたい。
これは意図的なものではないかもしれないけど、冒頭のハルが5年後の姿で、中山・井上の年齢差が5歳なんだよな…と思って頭を抱えた。いつの間にか大人になってしまったハルが5年後なら、元は高校生くらいだったのかな、少し年上のナツミが好きだったのかなと勝手に微笑ましくなっていた。未成年飲酒になってしまうけど。
 
本編の時間軸が冒頭シーンの『回想』か?と気付いた瞬間、この幸せ(に見える)世界はいつ崩れてしまうのかとハラハラしていたので、やはり二回(できればヤングチーム)を見ておくべきだったな…。
ハルやナツミの不思議な言動に、頭の中がハテナマークで埋まって爆発しそうな頃に出てくる『舞台』『台本』という、それらが全部嘘かもしれないというワードは正直ずるい。一気に虚構になる。いつ世界が崩れるのか考えていたせいもあり、この三人は本当に生きているのか?誰かはすでにいないんじゃないか?と結構序盤から穿った見方をしていた。当たらずとも遠からず。
 
個人的にはその話が『実話』だとか『実体験』だという話は事前に聞きたくないのだけども、三好君のことをよく知る前だったのでセーフだと思っていた。でもぱちすてDVDを見れるだけ見て、逆さの鳥を見て、ブログを遡って。あくまで舞台から見える・読み取れることと、ファンに向けられた情報でしかないとはいえ、それらで三好君のことを知ったうえでもう一度オンタマを見てみたかった気もする。きっと受け取り方が180度…とはいかずとも、135度ほど違って見えたと思う。
 
パンフにある上演台本のセリフが「キャラクター名」と「台本の役名」で明らかに区別されていたのに、練習以外のシーンでも実際のキャストはきっと演じ分けていたはずなのに、そこまで細かく思い出せなくて悔しい。
 
フライヤーやパンフの写真が柔らかい(ぬるい?)オレンジの照明なのに、表紙がシアンとマゼンタですこしキツめで、中身を閉じ込めている感じがして好き。
 
 
----ここから今現在の感想とかあれこれ----
 
男二人の喧嘩が好きなので、終盤のハルとトウマの言い争いめっちゃ良かった。あのシーンだけでもまた見たい。
トウマとナツミの兄妹のような空気感が本当に好きだった。ハルは完全にナツミのことが好きだったし、寝ているナツミの写真を撮りまくるところは何とも言い難い気持ち悪さがあったけどもそれ以上のものはなく。不思議な男2女1の同居生活、もっと見たかった。
あと一つ上の階に一人で住んでいるお姉さんのことが知りたい。医者だったりするのかな。
 
オンタマが一番好きなのは、主演がよしくんだったのも脚本演出が両方らんくんだったのも大きいけど、あの「日常」と「非日常」のちょうど中間くらいの空気がわたしにはちょうどよかったんだなと思う。(101号室は外から病院と呼ばれていたから、あの噛み合わない会話やおかしな電話や18.5度という体温が「非日常」かというと、そうでもないのだろうけど)
わたしが演劇に求めるのはそれなんだなと、色んな作品を見るようになって改めて気付いた。日常生活に近すぎると嫌になるし、ファンタジー色が強すぎてもあまり食指が動かない。Buildingのコンセプトに真っ向から喧嘩売ってるみたいになっちゃうなこれ。すいません。でもアワベビの日常感がしんどすぎたし水の泡もあらすじだけ聞くとしんどい予感しかしないんだよな…!
 
そういえばハイステから近藤君を好きになった友人らにぱちすてDVDをオススメするのがとにかく微妙で(出番の量的な意味で)、オンタマのDVDが出ていたら良かったのにな…と残念に思う。わたしもヤングチーム見たいし。
記録映像は撮っているようだし水の泡は撮って出しDVDが出ることが決まっているみたいなので、オンタマもアワベビもいつか配信等で見れたら嬉しいなぁ。
 
 
 

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ねえ知ってる?オタマジャクシは、生温い水の中で育つの。

そして、ある程度放っておいても勝手にカエルになる。

ただ、時間さえかけてあげれば。

 

Building101「オンタマジャクシ」