ぼちぼち観察記録

見た舞台の感想やオススメや自分語り。関西小劇場と推しさんとミュージカル。

それは二人の物語。『ストーリー・オブ・マイ・ライフ』10/5マチソワ

2021年12月追記:

再演おめでとうございます!!!この記事書いたあとに名古屋へ飛んだり韓国版の話を聞いたりと2年拗らせたので、今となっては自分の中での解釈が全然違うな‥とも思うのですが、初見の印象は初見でしか出ないので加筆修正はせず残しておきます。




2014年に一度見たにも関わらず、2019年頭にスリルミーに狂ってから早10ヶ月。感想を探すとたどり着く、韓国ミュ感想ブログの数々。そしてどのブログでもスリルミーと共に語られていた作品、それがストーリー・オブ・マイ・ライフ。通称(?)SOML。

へーこれも二人ミュージカルなのか、あっ日本でもやるの?ってか万里生さん!!?と、トントン拍子でチケット取った。推しのいないミュージカルしかも日本初演っていつもそこまで積極的に行けないけど、スリミ好きな人が好きならわたしも好きやろ…という確信と、繭期*1が大好きな役替わり上演だと聞いて即決。オタク、ちょろい。

10月1週目にでかめの関西公演が固まりすぎてて、一回しか見れないかもってドキドキしてたけど両方見れた。

 

ストーリー・オブ・マイ・ライフ 10/5マチソワ

人気短編小説家のトーマスは、幼なじみのアルヴィンの突然の死に際し、弔辞を読むために故郷へ帰って来る。しかし、葬儀が始まるというのに、アルヴィンへ手向ける言葉が思い浮かばない。すると死んだはずのアルヴィンが目の前に現れ、トーマスを自らの心の奥深くへと導いていく。そこには延々と続く本棚があり、トーマスの思い出と積み重ねた人生の本当の物語を書いた原稿や本が存在していた。アルヴィンは、その中から弔辞に相応しい2人の物語を選び、トーマスの手助けを始める。しかし、トーマスはそれを拒み、助けを借りずに弔辞を書くと言い張るが、アルヴィンは気にもとめず、次々と物語を選び、語っていく。果たして、弔辞は完成するのか・・・。
いくつもの物語が語られるにつれ、2人の間に存在した数々の埋もれてしまっていた小さな結びつきが明らかになっていく。
アルヴィンとトーマスが子供時代に育んだ絆と生涯を通じて築き上げた友情の物語。

 

田代万里生 平方元基 (相互出演)

 

ートーマス・ウィーヴァー
名声を得たカリスマ作家。アルヴィンの生涯の親友。

ーアルヴィン・ケルビー
繊細で、自由奔放な男性。トーマスの生涯の親友。

 

ストーリー・オブ・マイ・ライフ | 【公式】ホリプロステージ

 

マチネを見たあとは圧倒的多幸感に包まれて、「まりアルめちゃめちゃ可愛い!目が足りない!ちょっとまりアルの動きが多すぎて情報量やばくて、ひらトムの台詞いくつか聞けてなかったごめん!スーツかっこよすぎ足が長すぎ、二人とも歌うますぎ!」ってテンションの高い(IQは低い)感想ばかりが出てきた。曲も好き、小編成バンドによる生演奏も良い、でかい本棚も素敵。すごく晴れやかな顔で会場をあとにした。

ところが一転、ソワレは「いやこっちがトゥルース*2だわ、まりトムめっちゃええやん…ひらアル純粋…泣けた…」ってしみじみした。マチネでどゆこと?って思ったとこもだいたい解決したし、考えれば考えるほど「しあわせな話では…なかったな…??」って気付いた。わたしの情報処理力がポンコツなだけかもだけど2回見て本当によかったなと思いました。小並感。

 

◆ジョージ・ベイリーにあってアルヴィン・ケルビーにないもの

やたら公式に予習として「素晴らしき哉、人生!」をすすめられたので見ましたが、名作ってマジで名作なんだな…ってアホな感想を抱いた。2時間10分であの町ごと愛しくなってしまった。

それにしてもあんなに作中でジョージとクラレンスの名前が何度も出てくるとは思ってなかったし、ベルのくだりは「進研ゼミでやったとこだ!」って気分になったんですけど、これアメリカ人からしたら当然のことなのか…。日本でいうとなんだろう、ドラえもん?桃太郎とか?毎年クリスマスの時期にTV放送される、で忠臣蔵かなって思った。(今の若い世代には馴染みがないだろうけど)

天使の出てくる作品だったので、それのオマージュだからアルヴィンは天使(になった?)だと思っていた。衣装がクラレンス寄りなのでなおさら。それにしてはトムが驚かないし説明もないな…めっちゃしゃべるのに…と首を傾げていたら、天使(仮)アルヴィンとの会話が全て過去のやりとりの繰り返しだとわかっていく。そこに居なかったものは覚えてない。知らない。あれはあくまで、トムの記憶の中のアルヴィンだった。それに気付いてから見るソワレがめっちゃおもしろかった…。

 

家業を継いで町を出られないアルヴィンはジョージそのものだ、と最初は思ったけど、ジョージには商才があって、美しい妻と4人の子どもと、父親は亡くなっているけど家族もいた。友人もたくさん、あの町から愛されていた。

変わり者だと言われ続けたアルヴィンは、早くに母親とレミントン先生を亡くし、トムと疎遠になり、ついには父親までも。そんな彼には何が残されていたのか。彼に8000ドルは集められない。彼のために祈る人もいないから、クラレンスも来ない。というかアルヴィンにとってのクラレンスはトムで、ずっと祈っていたのに届かなかった。

マチネで、クリスマスカードの一枚目が偶然トムの机に届いてしまってた。あまりにきれいにふわっと落ちたものだから、ワイヤーでもついてんのかと思ったくらい。演出的には届いちゃいけないんだろうけど、なんだか嬉しかった。一枚目までは届いたのかなぁとも思った。最初は「会いたい」って率直に書いてて、次が「愛を込めて」だったのに、最後のツリー型のカードは「ケルビー家より」になって。時間の経過と心の離れ方があまりにエグい。(トムの負担にならないよう、アルヴィンが考えた結果の差出人なのかもしれない)彼の祈りは届かない。

 

予習した結果「いや…しんど…」って顔を覆う羽目になったけど見ててよかった。

 

◆役替わり公演による演じ方の違いの話

二人とも出ずっぱりなので、途中で水飲み汗拭きタイムがあって飲み方拭き方にも個性がある。元基くん汗っかきだとは聞いていたけどアルヴィンの衣装で拭きまくっていて笑った。万里生さん水飲みながら本にハタキかけてて器用だなと思った。さすが元書店員。

 

・田代アルヴィン

止まったら死ぬんか?(※死んでる)ってくらいめっちゃ動く。動きが忙しないし普通にうるさい。声も高くてずっと10歳前後。両手で水飲みながらニコニコと1876年歌うトムを見てるんだけど、間奏で「プハー」って息吐くのマイクが拾ってて(わざとだろうけど)思わず笑いをこらえた。パパの能力説明のとこのお客さんは老婆。独立記念日大暴れ。

万里生さん笑うと目がなくなるしずーっと笑ってるから、笑顔がなくなった瞬間がやばい。バタフライで途中から泣きそうになるのはひらアルと一緒だけど、顔がかなり翳る。トムがいなくなることを察したけど、ギリギリまで受け入れたくなかったような。何度も繰り返されるパパの弔事の場面、「…見せて」の冷えっぷりがすごい…台詞一つで一気に空気が変わる。好きだな…。

パパの弔辞を即興で言いながらもだんだん調子に乗ってきて、THE・アメリカンな身振り手振りで表情もコロコロ変わるのちょっとおもしろかった。

最後に机に座るところで、自分の隣の荷物をどけてポンポンと軽くたたいてトムを呼んでいたの可愛かった。

トムを焚き付けて背中を押すアルヴィンだなと思った。

 

・平方アルヴィン

変わってるけど、おとなしくて優しい子。トムの前以外ではそこまで自己主張しなさそう。単純に背が高くて声が低めだからかもしれない。ずっとトムのことを目で追ってる。ちょこちょこ動き回って机の後ろに隠れたタイミングでも汗拭いててちょっと笑ってしまった。トムと共に成長していって、どの回想シーンでもちょっと子どもっぽいところはありつつも年相応かなぁと。ハタキの使い方は雑。パパの能力説明のとこのお客さんは若い女性。

バタフライでどんどん涙はたまっていくし鼻も赤くなるけど、それでもなんとか微笑んでる。まりアルよりも、トムがいなくなることを受け入れようとはしている。できなかったけど。川に枝を投げながら、本当に悔しそうに小さく「あぁ…」と漏らす声が悲しかったから「滝越えた!」の嬉しそうな姿に余計に泣けた。

パパの弔辞は一言一言噛み締めながらゆっくりと。途中から表情が和らいで口調も軽やかになる。

トムを「見守る」アルヴィン。

 

・田代トーマス

めっちゃ頭良さそうだしユーモアもありそう。成長したあとの回想パートでも時々アルヴィンと一緒にはしゃいでいた。首元寛げたあとにネクタイピンひっかかってしばらく苦戦してたの笑った。机に足を上げるし結構テキトーなとこありそう。

自分よりでかいのに抜けてて頼りないアルヴィンを支えて、隣を歩こうとしていたトムかなと。でも自分も強くはなくてよく泣きそうになってた気がする。多分ひらトムはやってなかった、「お前が教えろよ!」のあとに膝をついてアルヴィンにすがり付いてしまうところの印象かな…。あれびっくりした…。

 

・平方トーマス

シンプルにスーツ姿がかっこいい…足が長い…。コートと一緒にジャケット脱げるし忍び込むとこで肘打ち付けるし(あれはアルヴィンも悪い)ちょこちょこ事故っていておっちょこちょい感。でも全体的には落ち着いていて、ベストセラー作家の威厳がある。回想の中でもちょっと大人びて…いるのは隣のアルヴィンが子どもっぽすぎるだけかも。でもそんなアルヴィンがいるからこそ自分はしっかり大人にならなきゃって思ってそう。自分より小さくて要領の悪いアルヴィンを守ろうとしていたトム。

 

万里生さんは実は初めて(スリミCDやアルバム聞いたりエリザDVD見たりはした)で、元基くんはアリスかと思ったらるひま納祭ぶり。多分。

目が動く方を追ってしまうのでどっちもアルヴィン寄りで見てしまったから、あと2回増やしてトムメインで見る回を作りたかった…大阪そもそも3公演しかない…。

最初に見たのがひらトムまりアル回なのでわたしの親ペアはこっちなんですが、最初にも言ったけどまりトムひらアルがトゥルースでひらトムまりアルがリバース*3だし、話がすんなり入ってくるのもまりひら…というのはただ2回目だったからかもしれない。

役替わり公演ほんっと好きなので今度も続けてほしいけど役者の負担がやばいような、スリル・ミーのように数組キャストで回してほしいような。すでに再演がある前提で話していますが東京完売だし再演…お願いします…。

 

◆アルヴィンの死因とバタフライ効果

死因は明言されてない以上どうとらえてもいいと思う。それこそジョージのように追い詰められた末の自殺でも、何かしらトラブルに巻き込まれての他殺でも、完全な事故でも。

わたしが今日の公演を見たうえで想像したアルヴィンの最期は、一番気分の落ち込む(トムが傍に居ないことが顕著なので)クリスマスイブに橋を歩いていたら、突風に煽られて持っていた本や紙の束が舞い上がって川に落ちそうになり、消耗した彼にはそれが蝶に見えたのかもしくはトム・ソーヤーの本だったかで、つい手を伸ばして追いかけてしまってそのまま落ちた。という感じ。追いかけて、川になって、海へ行く。半分事故半分自殺くらい。

なんでもその言葉で片付けるのもな、とは思いつつ結局二人は共依存だったと思う。あのタイミングで離れちゃいけなかった。アルヴィンと過ごした過去を小説として書き上げるトムの才能は確かだし、ずっと一緒にいるわけには行かなかっただろうけど、「こっちに来るな!」のとこ以外もどうも間が悪かった。じゃあいつだったら良かったのかと言われるとわからないけど…。首筋へのキスめっちゃびっくりしたし、その場所への意味(作中でもそうかはわからんけど)ググって倒れた。

作中でバタフライ効果について語られるけど、この二人の場合もし出会わなかったら…はあまり考えたくないので、アルヴィンがトムに本の素晴らしさを教えたのが最初だろうか。そこからトムは物語を書くようになり、大学へ行くため町を出て、アルヴィンの元から離れる。二人にとっての蝶の羽ばたきは、トーマスがトム・ソーヤーの冒険のページをめくっていくこと。

戯曲に残された余白の具合がすごく好きなので、余計なこといっぱい考えてしまうな…。死因なんて完全に妄想の域だし。きっとキャストが変われば受ける印象も変わるから、何卒再演を…(何回でも言う)

 

◆その他もろもろ

曲好き!訳詞は原曲知らないなりに直訳っぽいなとか字余りすごいなと思ったけど、まー難しいだろうしな…。照明はきれいだったけど、本棚の色めっちゃ変わるの笑った。クリスマスあたりからビカビカ光り始めてもう最後らへんめちゃめちゃ。ホラーかよ。本棚のあちこちに小道具が混ざっていて、水とか汗拭く布とかも一緒に置いてあるの雑多で好き。

マイクが顔の両側にあって、へぇその方が音のバランスいいのかな~二人だけだとそんなことできるんだって勝手に感心してたけどあれ水没で片方死んだ時の予備?

衣装はほんっとアルヴィンの丸メガネ蝶ネクタイ見たかったんですけど、あれだけ汗だくになってる二人を見るとしょうがないか…むしろ韓国の眼鏡どうなってんの??あとパンフにも書かれてたけど、元基くん寒色で万里生さん暖色になってるのおもしろい。ネクタイも、タンブラーも?というかパンフめっちゃ読み応えありますね…。弔事ってワードがあまりしっくりこないと思ったら実際意味合いが違うそうなので納得。

あんだけ雪が降ってくる舞台久々に見たんですけどやっぱきれいだなー!ラストで雪とキラキラが一緒に降ってきて、二人とも頭パーマかかってるからいっぱいひっかかってるの可愛い。その状態でカテコなの可愛い…。

余白はいくらでも考え込めるけど、全体を見ると爽やかでまっすぐ前を向きたくなる作品。それに加え曲と歌声と二人の可愛さで多幸感がすごい。もうちょい小さい箱で見たかったけど、これはだいたいの関西公演に言えることなので…。

 

いつかクリスマス記念公演やってほしい、昼にSOML見て夜に家で素晴らしき哉、人生!見たい。逆でも良い。

カテコで万里生さんがおっしゃってたように、この作品が末永く愛される作品になればいいなと思うし、そんな作品の日本初演を見られてほんっとうに良かったです。

 

 

こういうちっちゃい可愛いとこいっぱいあったから覚えてるうちにレポ絵描いときたいなー。

 

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メインビジュアルひらトムまりアルだったっけ…忘れてた…。パンフの構成が左右両開きだけど、ページ数はまりトムひらアル側のが多いのでほんとこの公演どっちがどっちって決めずにやってるのか。
公式の初日レポ写真が片方だけなのでもう片方もほしい…。

 

*1:TRUMPシリーズを拗らせてるファンの総称。

*2:TRUMPシリーズをはじめ、末満健一氏作演出の舞台でよく行われる、劇中で対となる役を二人一組の役者がステージごとにトレードして演じる公演において、メインビジュアル等で使われたりして「正史」っぽい組み合わせのこと。役替わりした状態を「リバース」と呼ぶ。でもどの組み合わせが自分の中で一番ハマるかは人それぞれ。

*3:ギャグ要素が強めだったりキャストが活き活きしているとリバースって感じがする。