『BLUE/ORANGE』に打ちのめされた。
関東の小劇場で、三人芝居で、再演。公演が発表された時は気にもかけてなくて、かけてたとしてもあらすじで「うわ絶対苦手なやつだ…」ってすぐ忘れたと思う演目。
なのに、年明けスリルミーからのゲキシネ花でガンガンに成河さんの演技に殴られ、気付いたらブルオレ行くフォロワーが周りにいっぱい居て。えっ公演いつだっけ、あっ一ヶ月もあるの!?小劇場なのに!?すごい、じゃあちょうどSPECTERを見に遠征するからその前に行こう~渋谷から下北沢は近いからはしごできるね~ってチケットを取りました。
ちなみに何故SPECTER前が空いていたかというと、他のいくつかの演目の当日券に目をつけていたからだった。埋めてしまった。まぁこれも…縁ですね…。
あと出演者3人の会話劇なのに、上演時間が休憩含む2時間50分なのにびっくりした。色んな意味でやべぇ。ヤバイっしょ。幸運にもチケ取ったあとにアフトーが追加されたんですけど、見れるはずもなく下北へダッシュしました。最近多いな、マチソワ間ダッシュ。
一回しか見れてないし全然咀嚼しきってないので、明らかに間違ってるとこ以外はそっとしておいてください。台詞とか全部曖昧です。
『BLUE/ORANGE』4/21マチネ
STORY
ロンドンの精神病院。
境界性人格障害のために入院していたアフリカ系の青年クリス(章平)は、
研修医ブルース(成河)による治療を終えて退院を迎えようとしている。
しかしブルースには気がかりなことがあり、退院させるのは危険だと主張していた。
上司のロバート医師(千葉哲也)はそれに強く反対し、高圧的な態度で彼をなじる。
納得のいかないブルースはクリスへの査定を続け、器に盛られたオレンジの色を問う。
彼はそのオレンジを「青い」と答えた――。
戯曲・役者・箱の使い方がぴったりと合っていた。どれかがちょっとでもズレた瞬間崩壊する空間。場の空気のうねりが目に見えるかのようにぐわっと流れていく。セリフ量も異常だし緩急は凄まじいし、後半もはやプロレスかよってくらい狭い板の上を駆けずり回り暴れて物を壊し叫び続ける。それでいて三人ともめちゃめちゃうまい。ほんっとすごいもんを見た。
この演目、カルチベートチケットという制度がありまして。
一人カルチベートチケット | web dorama de songha
朝日新聞デジタル「BLUE/ORANGE」成河さんインタビュー下編は、成河さんが始めた「一人カルチベートチケット」についてお話いただきました。観客のチケット周りの現状をここまでわかってる役者さんは初めてです。有料部分で観客の多様性が演劇にもたらすもの、俳優と観客のあり方などを語っています。 https://t.co/tutqeU5FRr
— 大原 薫 Kaoru Ohara (@theresonlyhere) March 24, 2019
成河さん、以前からお名前は存じてたけど花髑髏から始まり、美女と野獣(ルミエールの吹替)、子午線の祀り(テレビ放送)、スリル・ミー…と色々拝見しました。ドラマや映画までは追いかけていないし、フリコミや人間風車は見れてない。エリザのチケもない(…)
その演技の幅や演劇への想いに魅了されつつも、「頭良すぎて逆に怖いな」っていう印象があり。これは今もそう。自分の考えをじゃんじゃん発信して行動できる人。わたしがここでぐだぐだ言うより、上のブログを読んでいってもらうとそれは十分にわかる。色んなことをこっち側に伝えてくれる。すごい人だなぁと、この人を追いかけてたらすごいものが見れるんだなって思う。
だから、そんな成河さんが「おもしろいよ」「わかりやすいよ」「友達連れて見に来てね」っていうこの作品がおもしろくないとは微塵にも思ってなかったんですけど、もうとんでもなかった。もしわたしが観劇ビギナーの頃にこれを見ていたら、その後の観劇人生を大きく左右されてると思う。そんじょそこらの会話劇じゃ満足できなくなるか、もしくは演劇の怖さに負けて小劇場から遠のく。そのどちらか。これを気軽に見せるの結構博打じゃない?演劇自体が博打だけども。やべーよ。でも、それでいいんだろうな…まず見てもらうことが大切。
初めて行ったDDD青山クロスシアターは小奇麗なインディペンデントシアター2ndって感じ。不思議な立地。天井は低め。舞台を真ん中においた対面舞台。椅子の下にスピーカーがあってHEP HALLっぽくもある。まさに小劇場。なのに、なのに…椅子が…良い…!!!いやほんとこれ感動したんですよ…おかげで約3時間余裕で座れた…。椅子は大事。この劇場まるごと関西にほしい。
セットは病院の一室らしく机と椅子がいくつか。机の上には資料といくつかのオレンジ。シンプル。あと奥にベンチとゴミ箱、ウォーターサーバー。舞台上に業務用のウォーターサーバーあるのシュールだし、キャストが度々飲みに来るのおもしろすぎんか?もちろん演技として、なんだけども普通に給水タイムだよな??三人舞台で三時間弱演ることを思うと必須アイテムよね…。時折「ゴポッ」って水音が鳴るのもおもしろかったんだけど、劇評を見てたら第四の出演者って言われてた。確かに。ラストシーンの音もわざとよね?どうやって操作してんのかわからんけどびっくりした。
客席に出入りする扉がそのままセットとして使われていて、その向こうのロビーは病院の廊下になっている。扉を開ける度に病院っぽい穏やかなBGMが聞こえてきて、照明の感じも違う。劇場の活かし方がおもしろい。廊下に飛び出したブルースとロバートがそのままロビーで口論を続けるんだけど、声の遠さや反響の具合で本当に廊下での言い争いを聞いてる気分になって「すげー…」って感心した。
対面舞台のE列側が表、W列側が裏と言われてたんですけど、わたしの席はZ1だったので裏の一番後ろ(といっても実質4列目…)の端。特にブルースの表情は見えないことが多かったので、あぁ確かに裏側だな~と思いつつも、それがまたおもしろかった。終盤でクリスに泣きつくブルースのシーンがまさかのウォーターサーバー死角。すごい絶妙に見えないの。何してるかギリギリわかるくらい。隠れているのがウォーターサーバーなだけに、その陰からのぞき見してしまっている感覚があってドキドキした…。ある意味計算された死角ですよね。他にも見えんとこいっぱいあったけど、あまり悔しさはなかった。
その代わりこの席、扉の向こうがめっちゃ見える。さっき言った口論してる姿とかは見えないんだけど、奥行きがあるのでそのまま廊下が続いてる感じした。扉が開けっぱになって白い照明と穏やかな音楽がまっすぐ入ってきたところは、神々しくて教会っぽさがあった。ラスト前の青い照明はすごく目を奪われた。
で、肝心の内容なんですけど言葉で感想を綴るのがむずかしーんだこれが。『境界性人格障害』から始まって色んな境界の話が出てくる。
そうですね、
テーマとしては、
一部。例えば、僕たちにとって異常と正常の境目はどこなのか
僕たちは誰とでも分かり合えるのか
果たしてその必要があるのか
そもそも僕たち、とは何なのか
このお芝居のキーワードは境界です。ジョーペンホールはなんだかんだ親切なので全部台詞に書いてあったりします。わたしとあなたの境界。僕と世界の境界。コチラとアチラ。曖昧な世界を明確にしようとする意思。笑い飛ばせたら幸せでしょうか。
ブログで度々言ってるのですが、わたしは男同士の言い争いがめっちゃ好きなので二幕はニヤニヤしながら見てた。ほんっとうに緩急の付け方がすごい…叫んでるし早口なのに聞き取れるし、ちょっとでもテンポずれたり台詞間違えたら戻せなさそうな言葉の殴り合いはいっそ爽快。訳詞も素晴らしかったんだと思う。言葉のチョイスにひっかかったりしなかった。
本当に良い劇場だったのでまた来たい。