ぼちぼち観察記録

見た舞台の感想やオススメや自分語り。関西小劇場と推しさんとミュージカル。

モノモース『エンドルフィン』

すごい三人が組んだな、と思った覚えがある。

すごいとか言いながらその時点ではsun!!さん改め藤本さんは拝見したことなかったし、大塚さんも2015年TRUMPで知った(あと白浪DVDでも見た)くらいで、玲央さんも柿二作(世迷言・虚仮威)と真田十勇士…だけかな?なのでお三方の演技を知っているというには程遠かったはずなんだけど。
でも、うわすげぇ、絶対見に行くって思ったしチケットも発売日にとった。ここの記事読んでくださってる方は、わたしがぱっちか推しさん関連以外のチケを即決で取ることが如何に珍しいかわかると思う。

チケットを取れない理由の一つとして、わたし結構苦手な話、地雷が多いんですね。
『地雷』は二次創作系のオタク界隈の単語だけど「口にしたくないし、単語を目にすら入れたくないし、その要素が入っている話は読みたくない、でも排除できないのはわかってるしそれを好きな人を否定できない」という点であまりにわかりやすい。それやねん。

小劇場はフライヤーや公式サイトに書かれているあらすじをそこそこ頼りにするし、大きなネタバレは踏まない程度に初日感想を探してから行くかを決める。地雷がないか吟味する。テレビは消せばいいし映画は予告編が作られているから避けられるけど、観劇、特に小劇場は思わぬところで地雷にぶち当たる。何回か踏み抜かれてる。そして逃げづらいし、小さな空間で集中して見ることで嫌な気持ちが倍増していく。
ちなみにアワベビがあらすじからしてド地雷だったんだけど、行ったら行ったで憤りのあまりにはてブロを作ることになったから、悪いだけじゃないんだよなぁ。

そんなわたしが、このすごい三人+作演が悪い芝居の山崎さんという、どう考えてもしんどいものエグいもの作るやろ!って舞台を見に行ってきました。

 

『エンドルフィン』

エンドルフィン(endorphin)は、内で機能する神経伝達物質のひとつである。内在性オピオイドであり、モルヒネ同様の作用を示す。特に、脳内の「報酬系」に多く分布する。内在性鎮痛系にかかわり、また多幸感をもたらすと考えられている。そのため脳内麻薬と呼ばれることもある。

エンドルフィン - Wikipedia

二度寝でも出るんですっけこれ。

 山崎さん作演は「観音クレイジーショー」しか知らなくて悪い芝居には行ったことがない。観音はわけがわからないなりに色々考えることができて大好きなので(メイン二人がそもそも好きだという補正もある)、まぁ今回もわからないし生々しくてエグいとこあるんだろうなと思ってた。実際あらすじ見てもよくわかんなかったので、若干覚悟はしていた。そしたら東京で見た方に「お腹すかせて行くのもありかも」と言われて、「ん???どゆこと??」って思いつつ軽くご飯食べて行った。ら、

いやあらすじと全然ちゃうやん!!

希望島(通称・絶望島)というゴミの島に捨てられた少年が猫とか鳥とかゴミとか自分の身体の一部とかを食べながら死ぬまでの…否、生きていた話。話がわからんどころかあまりに直球だった。

全く想像と違って方向性も違いすぎて、見ながら何回も「マジかよ」って心で呟いた。あらすじとだいぶ変わったみたいな話はちょっと聞いてたけど、ここまで変わるのかよ!
これは地雷ありうる、ヤバい、と話の展開と自分の心配をしていたのだけど、幸いわたしは大丈夫だった。でもあかん人はめっちゃあかんでしょこれ。なんてこった。そんな雑念がかなり脳内を占めていたので二回行くべきだったな…とじわじわ後悔している。細かいとこ見れなかった。

舞台美術が植田昇明さんだったので、舞台上にあるセット小道具そのほとんどが服。猫もぬいぐるみ?(ただタオル丸めただけのようだった気もする)で、血は赤い布や毛糸。中身もピンクの布。冷蔵庫はトランク。アフタートークでポールハンガーが人に見立てられていて、どんどん物が減っていくことでやせ細っていくと聞いて(自分で行った回ではないんですけど)へぇ~って思った。そういうとこ全然見れてない…。

とにかく演技が上手いから、最初に猫を殺した時はこっちも息ができなくなった。バラバラになっていくさまは、布の使い方がうまくてうわすごいほんとに血に見える臓器に見える、すごいって感心してた。今思うとすごいなーうまいなーって思いながら見てた部分が多いから、自分の中でセーブかけてたのかもしれない。入り込みすぎるとしんどいから。

基本的に玲央さんが少年だったのだけど、最初の年端もいかない少年声から最後に死にそうになりながら絞り出すハスキーボイスの幅が広くて、えっ玲央さんこれマジで声潰してない大丈夫?って思ってしまった。アフトーで普通の声だった。すげぇ。本当に死んでしまいそうだったのに。仰向けに倒れている少年の図は照明も相まってとても美しかったです。宗教画っぽい。

大塚さん、TRUMPで見た時にめっちゃ発声の仕方が好きだなぁと漠然と思っていたので、今回は語り部で沢山聞けて嬉しかった。そして怖かった。蛆山の真意は全くわからないままだ。いちいち客席(社員ってことだけど)に語りかけてくるのが嫌な感じ。ものすごく他人事のように語るのが怖いんですよね、めっちゃ当事者のくせに。本当にあの島をどうにかしたくて少年を利用したとも思えないような…?

藤本さんは声が特徴的だなぁと筋肉少女で思っていたのだけど、今回は本当に少女で少年だった。ちょっとジブリ感あるよね可愛い。ダンスはないけどもあの狭いセットを縦横無尽にスルスルと駆け回る。気付いたら違うところにいる。ニイナは逆に動けない分、細かな表情の違いとか声の震えとか素敵だったな…ニイナが猫を手に掛けるところで一緒に泣いてしまった。

こうやって書き出すと、お三方とも声が好き。朗読劇とかやってほしい。

 

ネエは、死んだニイナのことを食べてしまうのかなと思っていた。最初に見つけた死体は餌にしたりして食べなかったかもしれないけど、自分の腕すら食べるあの極限状態だとそれもあるかなと。なんとしても生きるためならそうするかなと。
でもそうはならなかった。二人で居ることを知ってしまったから、一人は嫌だって思ってしまうのかな。何度も繰り返される「俺はここに居たんだ」という言葉は、誰に届けばよかったのか。

おもしろかったかというと、「すごかった」が先に立ちすぎてよくわからない。いやおもしろいものではないか。
でもあらすじと違った件も含めて、すごい体験をしてしまった…って感じです。
すごいって言い過ぎだなこの感想。

 

終わった後すごくお腹がすいて、肉食べたい!って思ってたのだけど帰ってテレビ見てたら寝てしまったので、次の日に作中に出てきた食材と似たようなご飯を食べた。
初日アフトーのあんちゅが「物を大切にしなきゃ」という感想を抱いたと言っていたけど、わたしは「ご飯はよく噛んでしっかり食べよう」って思った。

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あと、明日も生きなきゃとも思ったので仕事頑張ろう。